OEM車という車があるのをご存じでしょうか?
OEM車は自動車メーカーが自社で生産した車ではなく、ほかの自動車メーカーが生産したモデルに自社のブランド名を付けて販売する車です。
街中を走っている車を見て、あのメーカーの車だと思っていたのに違うメーカーのエンブレムがついているのを不思議に思った方もいるのではないかと思います。
そもそもなぜそんな車が存在しているのか?
わざわざそオリジナルモデルではないOEM車を買う人ってどんな人なんだろう?
という疑問にお答えするとともに、自動車を購入するユーザーにとってのOEM車のメリットとデメリットについて解説します。
あわせて現在市場に販売されているOEM車の最新情報やOEM車の中古車情報についても紹介していますので、車選びの参考にしてみてください。
・自動車メーカーがOEMビジネスを継続する理由
・OEM車を買う人には2つのパターンがある
・OEM車を買うメリットとデメリット
・OEM車のデメリットを克服する方法とは
・自動車メーカ各社のOEM車の情報
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そもそもなぜOEM車が存在しているのか
OEM車が存在する理由は、OEM車を供給を受ける側と供給する側それぞれにメリットがあるからです。
OEM車の供給を受ける側のメリット
ではまずOEM車の供給を受ける側の得られるメリットについて解説します。
OEM車の供給を受ける側の自動車メーカーにとってのメリットは、OEM車を自社の商品ラインアップにすることで膨大な研究開発費を投じることなく自社に足りないセグメントの穴埋めが可能になることです。
自動車市場にはセグメントという概念があって、自動車メーカー各社はそれぞれのセグメントに求められる商品として新型車を開発し投入しています。
その研究開発費用は数百億円とも言われており、大手の自動車メーカーといえどもセグメントに商品が無いからといって簡単に投資できる金額ではありません。
そういった投資をすることなく、自社の商品ラインアップの充実を図れるのはやはり大きなメリットだといえます。
OEM車を供給する側のメリット
次にOEM車を供給する側にとってのメリットは、OEMによって生産数量が増えれば供給元の工場の稼働率が上がる事と、固定費の償却台数が増えるので生産コストの低減、すなわち製造原価低減による利益の拡大効果が生まれることです。
OEM車として提携する自動車メーカーに供給すればそれだけ生産数量を増やすことが出来ます。
生産数量が増えてもOEM車は相手先ブランドの売り上げなので供給元への利益配分等はありませんが、生産数の増加による雇用の安定化や要具償却の前倒しが大きなメリットです。
OEMは車だけ?
OEMは「 original equipment manufacturer」の略で、相手先のブランド名のために製造されたさまざまな商品が対象になります。
なのでOEMは車だけではなく食品や化粧品、家電製品に至るまで様々な分野に展開されています。
ただそういった商品は、自動車のようにもともとのデザインや基本形状に大きな特徴がないので、OEM製品であることほとんど意識されることなく流通しています。
OEM車を買う人はどんな人なの?
では実際にOEM車を買う人はどんな人がいるのでしょうか。
OEM車を買う人は大きく分けると、
- OEM車を買わざるを得ない人
- OEM車をあえて選ぶ(買う)人
のパターンに分けることができます。
OEM車を買わざるを得ない人ってどんな人?
OEM者を買わざるを得ない人とは、OEM車のブランドと何らかの関わり合いのある人になります。
日本には複数の自動車メーカー(OEM)があり、その中枢となる本社やそのメーカーの車種を生産する工場は全国各地にあります。
それらがある都道府県にはその自動車メーカーに部品を供給するサプライヤがあり、自動車メーカーの新車販売はそれらサプライヤの売り上げに直結しています。
したがって一台でも多く売れてくれる必要があり、サプライヤーも自社の社員にそのメーカーの車を買うように勧めます。
勧めるというよりはそのメーカーの車でないと会社に乗り入れられないとか、社員駐車場が利用できないといった規約を設け、ほぼ強制的に取引のある自動車メーカーの車種を買わせるというのが実態です。
OEM車をあえて選ぶ(買う)人とは
それでは次に、OEM車をあえて選ぶ人はどんな人なのか?ということですが、それはOEM車を選ぶことにメリットを感じている人ということになります。
OEM車にはメリットとデメリットがありますが、OEM車を好んで買うユーザーはOEM車の持つデメリットを超えるメリットを感じているということが言えます。
ユーザーにとってのOEM車のメリットとデメリット
ユーザーにとってのOEM車のメリットは以下の内容になります。
- 選択肢が増える
- オリジナルブランドよりも安く買うことができる
- オリジナルブランドより納期が早い
選択肢が増える
OEM車はオリジナルブランドとの差別化を図るために部分的なデザイン変更を施しています。
それによってベースは同じでありながら違う印象の車になっているので、自動車を購入するユーザーからすれば選択肢が増えるといえます。
たとえば発売以来乗用車の月間販売台数ランキングで常にTOP3を維持しているトヨタライズはダイハツから供給されるOEM車であり、オリジナルブランドのダイハツではロッキーという名前で販売されています。
ライズとロッキーはフロントのデザインが大きく異なり基本コンポーネンツは同じでありながらもまったくイメージの違う別車種の印象を持っています。
またOEM車はオリジナルブランドとディーラーオプションなどのアイテムも変わってくるので、オプション自体の選択肢が増える場合もあります。
オリジナルブランドよりも安く買うことができる
OEM車もオリジナルブランドのモデルもグレード設定による若干の差はあれど基本的に新車価格設定はほぼ同じになります。
なのになぜOEM車の方がオリジナルブランドよりも安く買えるのかというと、OEM車はオリジナルブランドのモデルよりも値引きが大きいケースがほとんどだからです。
その理由はOEM車は一部の車種を除き、オリジナルブランドよりも知名度が低く市場での人気も今一つなモデルが多いです。
市場での人気が低いためオリジナルブランドよりも値引き額を大きくしたりオプション値引きが大きくなる傾向があります。
新車の人気が低いということは中古車相場もオリジナルブランドよりも低くなりますので、同程度の中古車においてもオリジナルブランドよりも安く買うことができます。
オリジナルブランドより納期が早い
オリジナルブランドよりも人気がないOEM車は納期待ちの状態が発生しずらく、購入契約してから納車されるまでの期間が短いというのもメリットです。
決まった期日までにどうしても車を手に入れたいといった場合はOEM車も選択肢に入れるとよいですね。
一般的にはそうだけど例外もある
このように一般的にはOEM車を選択することは価格や納期の面でのメリットがありますが、実は例外な車種もあります。
その例外な車種が先にも紹介したトヨタライズとダイハツロッキーです。
これは2020年1月から8月までのトヨタライズとダイハツロッキーの新車販売台数のグラフです。
オリジナルブランドであるダイハツロッキーに対し、トヨタライズは3倍~5倍以上の月間販売台数を記録しています。
そして新車値引き額を比べてみるとダイハツロッキーは最大30万円なのに対しトヨタライズは最大でも15万円が相場となっています。
また新車納期はロッキーが平均2.5か月に対しライズは3か月~3.5か月となっているようです。
これは圧倒的にOEM車がオリジナルブランドを凌駕したケースですが、その要因はやはりトヨタのブランド力と販売力の賜物ではないかと思います。
供給側のダイハツにしてみればトヨタブランドの販売力による製造原価低減と、それに伴う利益拡大の恩恵は十分に得られたものの、ダイハツブランドとしてのセグメントにおける地位確立は果たせていないという、複雑な状況だといえます。
OEM車のデメリット
OEM車のデメリットは以下になります。
- ダサいといわれる
- 存在感が薄く目立たない
- 下取りが安い
ダサいといわれる
OEM車はダサいというのをよく耳にしますが、ダサいといわれる理由は所詮オリジナルブランドのコピー商品というイメージを持たれてしまっていることと、またOEM車の供給を受ける側の自動車メーカーの穴埋め的な車種とみられてしまうといったところです。
存在感が薄く目立たない
OEM車はオリジナルブランドよりも存在感が薄く目立たない車種が多いです。(トヨタライズは例外として)
たとえばライズ/ロッキーと同じくトヨタとダイハツの間でのOEM車でいえば、ダイハツメビウスとダイハツアルティスという車種があります。
実際にこの車が走っているのを見かけたことがありますか?
発売以来何台かは市場を走っているはずですが、おそらくメビウス=プリウスα、アルティス=カムリと認識されたのではないかと思います。
メビウスはトヨタプリウスαのOEM車で、アルティスはトヨタカムリのOEM車ですが、エンブレム以外はオリジナルモデルと全く同じなのでエンブレムを確認しないとダイハツの車だということには気付かない、存在感の薄いモデルなのです。
下取りが安い
OEM車の最大のデメリットがこの下取りが安いことです。
オリジナルブランドに比べてダサい・存在感が薄いといったネガティブなイメージを持たれるOEM車は中古車市場での人気も低く、中古車価格相場も低いです。
中古車価格相場が低いということは下取り価格も低いということで、元は同じ車なのにオリジナルブランドよりも下取り額が低いというのはユーザーにしてみれば納得できないことで、こういった背景もOEM車が売れない要因の一つとなっています。
下取りが安いというデメリットは買取査定で解決
そんなオリジナルブランドに比べて下取りが安いという、OEM車最大のデメリットを克服する方法があります。
それは下取りではなく買取査定に出すという方法です。
下取りの場合だと年式や走行距離ベースの一律評価となり、オプション装備や外観のドレスアップなどの価値が評価金額に反映されませんが、買取査定は市場のニーズも踏まえてオプション装備やドレスアップも考慮した査定評価額になります。
その分下取りよりも高く売却することが可能になります。
現在市場に販売されているOEM車の最新情報
ここまでOEM車の存在理由や実際にOEM車を買う人、またメリットデメリットなどの情報を紹介してきました。
では実際に今現在、OEM車として販売されているモデルはどんな車があるのか?を自動車メーカー別に紹介してみたいと思います。
自動車メーカー別OEMラインアップ
OEM車 | オリジナルブランド | ||
メーカー | 車名 | メーカー | 車名 |
トヨタ | ライズ | ダイハツ | ロッキー |
ピクシスエポック | ミライース | ||
ピクシスジョイ | キャスト | ||
ピクシストラック | ハイゼットトラック | ||
ピクシスバン | ハイゼットカーゴ | ||
ピクシスメガ | ウエイク | ||
日産 | ルークス | 三菱 | ekワゴン |
デイズ | ekスペース | ||
NV100クリッパーリオ | タウンボックス | ||
マツダ | フレア | スズキ | ワゴンR |
フレアワゴン | スペーシア | ||
フレアクロスオーバー | ハスラー | ||
キャロル | アルト | ||
スクラムワゴン | エブリィワゴン | ||
スバル | ジャスティ | ダイハツ | トール |
ダイハツ | メビウス | トヨタ | プリウスα |
アルティス | カムリ | ||
スズキ | ランディ | 日産 | セレナ |
トヨタライズ
画像出典:TOYOTA
先にも紹介した通り、トヨタライズはダイハツロッキーのOEM車です。
そしてOEM車としては他に例を見ない、オリジナルブランドよりも人気のある車種です。
まさに大ヒットとともいえるほどの人気ぶりのライズですが、その要因はコンパクトSUV以上の質感と、CH-RにはじまりRAV-4でアイデンティティを確立したトヨタデザインテーマを展開したフロントフェイスにあるといえるでしょう。
トヨタとダイハツの販売力の差はあれど武骨なイメージのダイハツロッキーよりも都会的なイメージを前面に出したライズのソフトなSUVという立ち位置の方がユーザーに支持されているということですね。
トヨタライズのグレード&価格
グレード | 駆動 | 価格 |
X | 2WD | 1,679,000 |
XS | 2WD | 1,745,000 |
G | 2WD | 1,895,000 |
Z | 2WD | 2,060,000 |
X | 4WD | 1,918,800 |
XS | 4WD | 1,984,800 |
G | 4WD | 2,133,700 |
Z | 4WD | 2,282,200 |
トヨタライズの値引き相場
5万円~15万円
トヨタライズの中古車相場
115.9万円~318.2 万円
トヨタライズの買取価格相場
130万~170万円
買取価格は走行距離・年式によって異なるため実際の評価額は買取相場価格と異なる場合があります。
日産デイズ
日産デイズは他のOEM車とは少し形態が異なる車です。
通常のOEM車は供給元の自動車メーカーが開発・生産し供給先に提供しますが、デイズの場合は日産自動車と三菱自動車が共同で設立したNMKVという合弁会社で開発され三尾自動車の生産ラインで製造されています。
そういった経緯から考えると、厳密にはデイズは単純にエンブレムだけを変えた車ではないのでOEM車とは呼べないモデルだといえます。
日産デイズのグレード&価格
グレード | 駆動方式 | 価格 | 駆動方式 | 価格 |
ボレロ | 2WD | 1,468,500 | 4WD | 1,602,700 |
S | 2WD | 1,327,700 | 4WD | 1,461,900 |
X | 2WD | 1,380,500 | 4WD | 1,514,700 |
ハイウェイスターX | 2WD | 1,567,500 | 4WD | 1,701,700 |
ハイウェイスターGターボ | 2WD | 1,648,900 | 4WD | 1,783,100 |
ハイウェイスターX プロパイロットエディション | 2WD | 1,666,500 | 4WD | 1,800,700 |
ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション | 2WD | 1,747,900 | 4WD | 1,882,100 |
日産デイズの値引き相場
5万円~10万円
日産デイズの中古車相場
50万円~185万円
日産デイズの買取価格相場
30万円~110万円
買取価格は走行距離・年式によって異なるため実際の評価額は買取相場価格と異なる場合があります。
カーライフアドバイザー 篠崎 律子
記事内容は編集部の体験談や独自のリサーチ結果に基づく内容が含まれています。
記事内容に関するご意見等は、お問い合わせフォームよりお願い致します。
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